オーガニック食品は「農薬や化学肥料を減らしただけ」の商品ではありません。 畑・家畜・加工・流通のすべてにわたり “汚染の持ち込みを防ぎ、いまある環境をむしろ豊かにする” という多層のルールをクリアした証しです。ここでは、有機 JAS を中心に EU リーフ・USDA Organic との共通/相違点を示しながら、クリアすべき技術基準を一段深く掘り下げます。読後には「どのマークが、どこまで守っているのか」をラベル裏側から読み取れるようになります。
1 土づくり・作付け段階で満たす基準
チェック項目 有機 JAS EU 有機 USDA 有機 実務ポイント 化学合成農薬 例外28種のみ許可(硫黄・銅・B.t. 等) 39種+銅上限4 kg Cu/ha/年 187種リスト制 記録簿と在庫を突合、使用回数超過は即失格 化学肥料 完全禁止 完全禁止 家畜副産窒素は条件付許可 EC値(電気伝導度)を年1回測定し硝酸溶脱を監視 土壌改良資材 動物性堆肥は抗生物質残留検査が必須 同左 同左 牛ふん堆肥は55 ℃×14日以上+3回撹拌を証明 緩衝帯 隣接慣行圃場と2 m以上 3 m推奨 リスク評価で可変 飛散農薬測定は葉面サンプリングで年1回
2 種子・苗・生物多様性
種子・苗 :原則有機種子。入手困難な場合は非処理種子を許容するが、後処理農薬(チウラム、メタラキシル等)は禁止。
遺伝子組換え(GMO) :0.9 %の実質混入許容限界を超えたらロット全体が失格。
生物多様性 :EU は圃場の5 %以上を「景観保全帯」に設定必須。JAS も推奨義務化が検討中(2026改訂案)。
3 病害虫・雑草管理
機械・物理的手段優先 :除草はフレームカルチ・マルチ・緑肥。病害虫は捕殺・天敵放飼(寄生蜂、天敵ダニ)。
天然系農薬の残留基準 :銅剤は作物別に最長 21 日 PHI(収穫前待機日数)。スピノサドは0.05 ppm MRL。
抵触リスク :果樹やジャガイモで銅蓄積が問題になり、JAS でも年5 kg Cu/ha→3 kgへ段階削減案(2027)の審議中。
4 家畜・畜産物の追加要件
項目 基準 具体値 飼料 100%有機(自給飼料を推奨) 遺伝子組換え飼料ゼロ 屋外アクセス 毎日・天候許容時 乳牛:1頭当たり放牧地 0.3 ha 抗生物質 病気治療のみ JAS=生涯1回 治療後 12か月は有機と表示不可 ストレス軽減 断尾・くちばしトリミング禁止 必要に応じ鎮痛処置
5 加工・保管・流通
原材料 95 %以上有機 :残り5 %も批准リスト内でなければならず、香料・着色料は原則不可。
加工助剤 :有機JAS は51品目のみ(硫酸Ca、炭酸水素K など)。USDA は82品目。
交差汚染防止 :ライン共有の場合は前後洗浄を SOP 化し、記録簿・ATPふき取り検査を年次審査で提示。
輸送・保管 :有機・慣行混載時はパレタイズで区分。ドキュメントチェーン(BOL, ロットID)を保持。
6 検査・認証プロセスの深掘り
書類審査 :栽培計画・資材一覧・リスク評価を提出。
初回実地 :圃場/施設のほか資材倉庫・水源も確認。
抜取検査 :残留農薬 0.01 ppm 超過または未記載農薬検出で失格。
年次更新 :書類+実地または書類+抜取をローテ。違反は即公表。
7 あなたが選ぶときのマニアック判定ポイント
ボルドー液の銅リスク :果皮を食べるブドウ・ブルーベリーは水+重曹 1%で30 秒こすり洗い。
動物性なら「完全放牧」表記を探す :屋外アクセス時間が長いほどオメガ3脂肪酸が最大 56 %高い(英畜産学会2025)。
加工品は「有機加工助剤不使用」まで書かれているか :特に有機チョコ・有機ビスケット。
8 体に良くない食品を避ける具体例
食品 理由 代替提案 発色剤ベーコン ニトロソアミン生成 有機・無添加パストラミ 合成色素ラムネ 多動スコア↑ 有機スパイスで色付けしたドライフルーツ リン酸塩ナゲット 骨カルシウム排泄↑ 鶏むね肉+全粒粉衣を自家調理
9 今日からできる段階導入ステップ
皮ごと食べる野菜を有機へ にんじん・りんごを JAS または EU に切替。
毎日使う調味料を有機・無添加へ しょうゆ・味噌・油を上から順に。
週1ベジデー×有機豆腐 牛肉 200 g → 有機豆腐に置換で CO₂ 約3 kg 削減。
レシートに緑マーカーで可視化 月末に割合を見て達成感を実感→継続モチベ UP。
まとめ
オーガニック食品は 農薬・化学肥料・GMO だけでなく動物福祉や加工助剤まで多層管理 。
JAS は農薬リストが最少、EU は制度網羅性、USDA は市場浸透度で優位性が異なる。
ヒトへの安全は「許可物質の毒性 × 使用量 × 残留管理」で決まるため、ラベルを鵜呑みにせず洗浄・保存・食べ方でリスクをさらに下げる のが賢い選び方です。
まずは 有機JASにんじんを皮ごと蒸し 、甘さと香り、そして体の軽さの違いを確かめてみてください。あなたが感じた“小さな変化”が、次の一品を有機に替える原動力になります。疑問があればいつでも相談してください。