あなたがスーパーの棚で「有機JAS」「USDA Organic」「EUリーフ」を見比べているとき、
“どれが一番安全でおトクか” をサッと判断できたら気持ちいいですよね。
結論から言うと――
ヒトのリスクは「許可物質の毒性 × 使用量 × 残留管理」で決まります。
例外農薬が少ない ≠ 安全 100 %。JAS でも銅剤を多用する果樹は皮をこすり洗いし、
EU でもスピノサド残留は検査報告を確認する、といった使い分けが必要です。
その前提で、3大認証を「基準の厳しさ・検査体制・残留実態」から俯瞰し、
今日1品だけ“納得して有機”を手に取るためのステップをまとめます。
1 基準の骨格を数字で比べる
規格 | 原料有機比率* | 転換期間 | 許可農薬数 | 化学肥料 | GMO | 検査頻度 | 違反罰則 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
有機JAS | 95 %以上 | 3 年 | 28 種 | 全面禁止 | 完全排除 | 年1回実地+書類 | マーク即剥奪・販売停止 |
USDA Organic | 95 %以上(70 %以上は“Made with”可) | 3 年 | 187 種 | 一部容認 | 0.9 %未満 | 年1回書類+抜取 | 罰金最大1.1万USD/件 |
EUリーフ | 95 %以上 | 2 年(多年草3 年) | 39 種|銅上限4 kg/ha/年 | 全面禁止 | 0.9 %未満 | 年1回実地+抜取 | 営業許可停止 |
*加工食品の場合。数字が小さいほど厳格。
- 農薬リストの短さでは JAS が世界トップクラス。
- 制度の網羅性(輸入ロット監視・電子追跡)では EU が最も厚い。
- 市場認知度は USDA が圧倒的。
2 “許可農薬”の中身と人体リスク
系統 | 代表例 | 承認状況 | 急性毒性 (LD₅₀) | 体内蓄積 |
---|---|---|---|---|
銅製剤(ボルドー液) | JAS・EU 許可 | 300 mg/kg | 蓄積:肝・腎に沈着 | |
スピノサド(生合成殺虫) | USDA・EU 許可 | 373 mg/kg | 非蓄積 | |
石灰硫黄合剤 | JAS・EU 許可 | 850 mg/kg | 非蓄積だが吸入刺激 |
- JAS は天然系中心だが、銅は慢性蓄積毒。
- USDA は許可農薬が多い一方、使用量と前収穫日数を細かく制限して残留を抑える。
- EU は銅剤許容量を具体的に数値規制し、2025 年以降さらに削減予定。
3 残留検査で見る実際の安心度
指標 | 有機JAS | USDA | EU |
---|---|---|---|
抜き打ち検査率 | 全事業者の5 %以上 | リスク抽出3 %前後 | 全輸入ロットの2 % |
2024違反率 | 0.27 % | 0.35 % | 0.31 % |
公表速度 | 即日 | 月次 | 24 h以内 |
検査密度と情報公開の速さは JAS ≈ EU > USDA。
違反に遭遇しにくいのは3規格とも事実ですが、「見つかったとき追跡しやすい」のは JAS と EU です。
4 味・栄養・鮮度に表れる差
指標 | 慣行 | 無農薬 | 有機JAS | USDA/EU 有機平均 |
---|---|---|---|---|
にんじん糖度 | 7.2° | 7.5° | 8.3° | 8.0° |
β-カロテン | 7.8 mg | 9.0 mg | 10.7 mg | 10.2 mg |
トマト香気リナロール | 1.0 | 1.1 | 1.4 | 1.3 |
ケールVit-C保持(7日) | 65 % | 70 % | 85 % | 80 % |
有機JASは化学肥料ゼロで“水ぶくれ”になりにくく、
糖・香り・抗酸化ビタミンが伸びやすい傾向。
皮まで安心して食べられる JAS にんじんは、
β-カロテン+23 %、クロロゲン酸+30 %が皮下に集中し、
蒸すだけで栄養吸収率が 1.4 倍に跳ね上がります。
5 それでも残る5つの注意ポイント
- 隣接圃場からの農薬飛散
- 銅剤の土壌蓄積と地下水流出
- 加工ラインの交差混入事故
- 土壌重金属(旧鉱山地帯など)は規格外
- 未熟堆肥由来の微生物汚染(O-157 等)
➡ 流水30 秒+ブラシ洗浄で銅・スピノサド 80 %除去。
➡ 消費期限内でも“泥付き新聞包み冷蔵”で菌数増殖を抑制。
6 今日からできる“安全&満足度UP”ステップ
- ラベルを見る順番を固定
有機JAS → EUリーフ → USDA。“Made with” は後回し。 - 皮ごと食べる作物は JAS か EU
にんじん・りんご・じゃがいもは残留が皮面に集中。 - 虫害に弱い葉物は USDA も選択肢
スピノサド残留は検出限界未満が大半で味も良好。 - 2週間レシート実験
JAS を3品 → 便臭、肌荒れ、日持ちをメモ → 効果大の品を継続し家計を最適化。
まとめ
- 基準の厳しさは 農薬・肥料リスト=JAS > EU > USDA、
制度網羅性は EU > JAS > USDA、
知名度は USDA > EU > JAS。 - ヒトのリスクは「許可物質の毒性 × 使用量 × 残留管理」で決まるため、
ロゴだけで安全を断言することはできません。 - まず 有機JAS にんじん1袋を皮ごと蒸す――
甘味と香り、日持ちの違いを体験したら、
あなたの“オーガニックの軸”がきっと定まります。 - 「知って選ぶ」小さな一歩が、家族の健康と地球の未来を守る力になります。